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日本の社会的養護の現状

社会的養護とは、保護者のない児童や被虐待児など、家庭環境上、親と一緒に暮らすことができず、養護を必要とするこどものために、公的な責任として、社会的に養護を行うことです。日本全体で、社会的養護の元に暮らすこどもは約4万6,000人に上り、そのうち半数以上のこどもが虐待を受けた経験を持っています。

児童養護施設で暮らす子どものうち、虐待経験のある割合
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出典:「児童養護施設入所児童等調査の結果(平成25年2月1日)」

こうしたこどもたちは、主に次のような過程を経て、社会的養護の元での暮らしを始めます。

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出典:「一時保護所の概要把握と入所児童の実態調査 (和田一郎ほか)」
     

まず、通報などがあり、特に深刻なケースだと判断された場合、そのこどもは一時保護所に預けられます。そのうち、家庭に戻ったり、裁判になったり、入院したりするこどもは約6割。家庭復帰が難しいと判断されたこどもたちは、親と離れて暮らすことになります。そのうち、現在8割くらいのこどもは施設で暮らし、残り2割が里親家庭で暮らしています。施設には様々な類型がありますが、その中でもっとも多くのこどもが暮らすのが児童養護施設です。

日本では里親の比率が低く、その理由としては、

(1)社会の認知が低い
(2)こどもが里親に預けられるのを実親が拒否する
(実親が、こどもを里親にとられるのではないかと警戒することもある)
(3)児童相談所がこども対応に忙しく、元々よく知っている施設にとりあえず預けてしまう

など様々です。
こどもにとってベストな選択肢が常に提供されている状態が理想ですが、現状はその理想と遠いところにあります。
  
 

国際ガイドラインと日本

  
  
それでは、親とともに暮らすことができないこどもにとって、ベストな選択肢とは何でしょうか。

ベストな選択肢は一人一人によって異なるため一概には言えませんが、国際的なガイドラインとして、2009年12月に国連総会が決議した「児童の代替的養護に関する指針」があり、日本語訳は厚生労働省のウェブサイトに掲載されています。
 同指針では、まず第一に、「家族は社会の基本的集団であると同時に、児童の成長、福祉及び保護にとって自然な環境」という前提の元、可能な限り、こどもが家族の養護を受け続ける、または、家族の養護の元に戻すための支援をした上で、それが難しい場合は養子縁組といった永続的解決策を探ることが掲げられています。その上で、社会的養護は、上記のような解決策が実現不能、もしくは児童の最善の利益に沿っていない場合に、最も適切な形式で、こども達に提供されるべきものとされています。社会的養護は主に二つに分けられます。一つは里親による養護で、もう一つが施設養護です。
 同指針の12条および22条では、社会的養護の元に暮らすこどもにも、安定した家庭を保障すること、養育者に対する安全かつ継続的な愛着心というこどもの基本的なニーズを満たすことの重要性が強調されています。特に幼いこども、中でも3歳未満のこどもに対しては、家庭を基本とした環境が提供されるべきという専門家の有力な意見を引用しています。​
    
 
 
 

2009年12月 国連総会決議
「児童の代替的養護に関する指針」

第12条

「非公式の養護を含め、代替的養護を受けている児童に関する決定は、安定した家庭を児童に保障すること、及び養護者に対する安全かつ継続的な愛着心という児童の基本的なニーズを満たすことの重要性を十分に尊重すべきであり、一般的に永続性が主要な目標となる。」

第22条

「専門家の有力な意見によれば、幼い児童、特に3歳未満の児童の代替的養護は家庭を基本とした環境で提供されるべきである。この原則に対する例外は、兄弟姉妹の分離の防止を目的とする場合や、かかる代替的養護の実施が緊急性を有しており、又はあらかじめ定められた非常に限られた期間である場合であって、引き続き家庭への復帰が予定されているか、又は結果として他の適切な長期的養護措置が実現する場合であろう。」
  
出典:厚生労働省ウェブサイト
 
  
 

低い里親委託率

  
  
施設養護よりも里親による養育がより家庭的な養育環境であることから、親ととに暮らせないこどもは可能な限り里親による養育とし、それが難しいこどもについては施設での養育とするのが、こどもの最善の利益に沿うものと考えられます。しかし、日本の社会的養護の現状は、前述の通り、施設の割合が非常に大きくなっており、里親委託率は、他の先進国と比較して低い水準に留まっています。
里親委託率の国際比較(2010年)
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出典:厚生労働省 「社会的養護の現状について (平成26年3月)」

また、0歳〜2歳未満の新生児のうち、里親に委託される割合はわずかに16%であり、多くは乳児院という施設に預けられています。

平成26年度の新生児の措置先
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出典:厚生労働省 「社会的養護の現状について(平成28年4月)」

こどもの最善の利益のためには、日本でも、里親家庭での養育を拡充することが重要です。しかし、だからといって、施設をなくし、里親家庭での養育のみをこどもに提供するのも、こどもの最善の利益にはつながりません。
 一般化はできませんが、児童相談所がこどもを里親に預けるか、施設に預けるかの選択に直面したとき、被虐待児で複雑な状況にあるこどもであるほど施設に預けられることが多いと考えられます。それは、被虐待児は(本人の責任ではないが)トラブルを起こしやすく、里親家庭ではこどもに何かがあったときに対処するのが難しい一方で、施設であれば専門性の高い職員もいるため対応できる可能性が高いだろうという考えが背景にあります。里親家庭で引き受けるこどもとのマッチングがうまくいかないと、場合によっては里親家庭そのものが壊れてしまうことすらあります。こどもの養育にとって、安心・安定した人間関係の元、特定の人と愛着関係を築くことは非常に重要であることから、里親家庭でのマッチングがうまくいかなかった時の悪影響は重篤です。しかし、施設であれば、児童指導員との相性が悪くても生活のユニットを変えるなどして対応することもでき、専門の心理療法士もついています。

児童施設別の虐待経験者数比率
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出典:厚生労働省 「社会的養護の現状について(平成28年4月)」
     

国連の「児童の代替的養護に関する指針」54条には「各国は緊急時、短期間及び長期間の養護のため、本指針の一般原則に沿った 多種多様な代替的養護の選択肢が利用できるよう保障すべきである。」とあります。
 社会的養護に暮らすこどもの最善の利益のためには、より家庭に近い養育環境が重要であり、そのためには里親委託率を高める一方、こどもの多様なニーズに対応するために、施設での養護も一定程度残す必要があります。ただし、社会的養護に関わる児童福祉施設等の現状の通り、施設での養護の現状は、家庭的な養育環境とは言えない施設が多く、改善が必要です。厚生労働省も、日本の社会的養護が抱える課題を認識しており、具体的には、平成27年度から平成41年度までの15年間に、里親等委託率を全体の概ね1/3とする目標を掲げて取り組んでいます。また、施設での養護については、現在は大きな寮のような施設での集団生活が基本であるのを、将来的には全施設を小規模のグループケアができるようにするという指針を持っています。
このスライドでは社会的養護の現在の概要がまとめられているので、ご覧下さい。(8ページから始まります)