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子どもの孤独

   
このページでは「こどもの孤独」について紹介していますが、ここでの「孤独」とは、単に1人でいる状態を指すのではありません。1人でいることによって安心を得られる場合もあれば、誰かと一緒にいながらも不安を感じることもあります。ブリタニカ国際大百科事典においては、

“Loneliness, distressing experience that occurs when a person’s social relationships are perceived by that person to be less in quantity, and especially in quality, than desired.”

つまり、「孤独(感)とは、量的、特に質的な意味において社会的な関係性が満たされていないと感じている時に経験する苦痛である」と表記されています。私たちは、「孤独」を「自分自身が誰にも受け入れられていないと感じている状態、誰かとつながりを持ちたくても繋がりを持てずに心理的な苦痛を”慢性的に”感じている状態」と考えています。
 

子どもの孤独についての現状

   
日本は世界の中でも孤独を感じる人が多い国だと言われています。それは大人だけでなくこどもにも当てはまることです。少し古いですが、右の2007年のUNICEFの資料を見ると、他の国に比べ日本人の孤独を抱える割合が突出して高いことがわかります。日本は2番目に高い国の3倍、孤独を抱える人の割合が高くなっています。
   
孤独を感じていると回答した人(15歳を対象)の割合
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出典:UNICEF, Child poverty in perspective: An overview of child well-being in rich countries, Innocenti Report Card 7, 2007
   

また、右のデータは、子どもたちの自己肯定感について調べたアンケートです。生活困難度別に結果が記載されています。どの層の子どもにおいても最も高い数値が現れているのが、「孤独を感じることはない」という項目に対する「思わない」という回答です。特に困難層がより孤独を感じる傾向にあるものの、生活困難度に関わらず全ての子どもたちが孤独を感じている傾向にあると言えます。
   
自己肯定感(「思わない」と回答した割合)(16-17歳):生活困難度別
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出典:平成29年7月31日 東京都福祉保健局 「子どもの生活実態調査」
 

子どもの孤独の背景

   

1.家族構成と居住形態の変化


近年、社会問題として「孤立」「孤独」が認識されるようになってきました。「孤独」の背景にはどのような社会の構造があるのでしょうか。H20厚生労働省による高齢者の孤立の分析を踏まえると、特に大きな社会構造の変化として
・家族構成の変化
・居住形態の変化
が挙げられます。前者について、核家族化が進み以前に比べて少人数での生活が営まれるようになっています。後者について、マンションや借家住まいをする人が増えています。これらにより近隣意識の希薄化、地域社会とのつながりの断絶の発生につながることになりました。

これらも含めた社会全体の変化により、「地域と繋がらなくても1人で生きていける社会」が誕生しました。しかしそのことによって、プライバシー意識が高まったり他人や行政から支援を受けることへのハードルが高まったりし、社会的支援を拒否する人も増えています。「問題が起きたときに頼りにくい社会」になり、問題を抱えている人がより孤独を抱えやすくなってしまっています。

このデータは元々高齢者の孤独死についての資料の中で触れられていますが、あらゆる世代のの孤独と背景は共にしていると言えるでしょう。    
放課後に過ごす場所の世代間比較(複数回答)
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出典:平成30年5月30日 厚生労働省 「第7回21世紀出生児縦断調査(平成22年出生児)の概況」
   

2.相対的貧困


(1)相対的貧困と子どもたちへの影響

困窮層の子どもたちは他の子どもたちに比べて、「孤独を感じることはない」という項目に対し否定的な回答をする割合が高いです。その傾向は小学5年生という早い段階から見られます。また自己肯定感に関する多くの項目において、困窮層の子どもたちは他の層の子どもたちよりも否定的な回答をする割合が高いです。相対的貧困は将来のことを考えたり将来に希望を持ったりすることも阻害すると言えます。
   
放課後に過ごす場所の世代間比較(複数回答)
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出典:平成29年7月31日 東京都福祉保健局 「子どもの生活実態調査」

   
(2)日本国内における相対的貧困の現状

   
国立社会保障・人口問題研究所による先進国における子どもの幸福度調査
   
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出典:ユニセフ イノチェンティ研究所・阿部彩・竹沢純子(2013)『イノチェンティレポートカード 11 先進国における子どもの幸福度―日本との比較 特別編集版』、公益財団法人 日本ユニセフ協会(東京)

総合的な幸福度の順位は6位と高いですが、物質的豊かさの順位が21位と全31か国の中でも低く、これは日本の子どもの幸福度を特に下げる要因だと考えられます。物質的豊かさは金銭的剥奪を測る「子どもの相対的貧困率」「子どもの貧困ギャップ」、そして物質的剥奪を測る「子どもの剥奪率」3項目から評価されます。ここでは特に物質的剥奪に注目します。
   
子どもの剥奪率
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出典:ユニセフ イノチェンティ研究所・阿部彩・竹沢純子(2013)『イノチェンティレポートカード 11 先進国における子どもの幸福度―日本との比較 特別編集版』、公益財団法人 日本ユニセフ協会(東京)

   
「子どもの剥奪率」とは、特定の所有物リストのうち2つ以上が欠如している子どもの割合を示したものです。所有物リストはリスト内の品目が「21 世紀初頭 の豊かな国で育つ子どもが持っていることが普通であると多くの人が考えるもの」(①P.9)かどうかを基準に、国ごとに作成されています。このリストのうち2つ以上が欠如している状態は、現代日本で生活するうえで当たり前に享受されるべきモノを享受できていない状態を指します。日本の貧困下にいる子どもたちは特に「インターネットへの接続」「宿題をするのに十分な広さと照明がある静かな場所」が特に欠如していると報告されています。
   
家庭の経済状況と学力
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出典:「子どもの貧困ハンドブック」松本伊智朗・湯澤直美・平湯真人・山野良一・中嶋哲彦 かもがわ出版(2016.11)

   
家庭の経済状況と学力の関連について、「全国学力学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した学力に影響を与える要因分析に関する調査研究」によると、家庭の社会経済的背景の低い子どもたちは、最も勉強時間が長い層であっても、社会経済的背景が高く勉強時間が少ない子どもたちに、学力が追いついていません。

また、社会経済的背景が最も低いグループが3時間以上勉強する割合は5.8%ですが、最も高いグループは23.2%です。反対に最も低いグループが全く自宅学習を行っていない割合は5.2%ですが、最も高いグループは1.8%です。

日本では「宿題をするのに十分な広さと照明がある静かな場所」が特に欠如している状態を踏まえると、物質的剥奪が子どもたちの能力や精神面(勉強への意欲)にも影響を与えると考えられます。
   

3.子ども虐待


さらに、上記のような社会構造が、子ども虐待の認知件数を増加させ、そのことが、子どもの抱える孤独を大きくしています。

まず、家族構成と居住形態の変化に伴い、「家事・育児は親が担うもの」という価値観がより一層強化されることとなりました(子育ての私化)。このような価値観のもと子育てにおいて他者を頼りづらい空気が醸成され、相対的貧困下にある家庭(ひとり親家庭においては半数以上が相対的貧困)を筆頭に子育てに投じられる資源が少ない家庭では、親の抱える負担がかなり大きくなっていると予想されます。親の抱える負担、特に心理的負担が大きくなり余裕がなくなれば、親と子どもが適切な関係を築くことは難しくなります。

子ども虐待はその典型例です。子ども虐待は、この四半世紀で100倍以上相談件数が増えています。増加の原因には諸説あり、実数は増えておらず認知件数が増えただけなのではないかという指摘も存在します。一方で、子ども虐待と認知される事案が増えたということ、すなわち、社会の子育てに対する目がある意味で厳しくなったことは確かです。その事実が、余裕がなく自分が思い描くような適切な養育をしたくてもできない状況にある親を、追い詰めている可能性があります。

子ども虐待を含む不適切な養育(マルトリートメント)は、子どもの心理面において3つのリスクを生じさせます。一つは、愛着障害のリスクです。愛着障害とは… 愛着障害を含む子ども虐待による悪影響は、他者との信頼関係形成を難しくしてしまいます。子ども虐待は、抑制型と脱抑制型というタイプの愛着を生んでしまうといわれています。次に、PTSD(心的外傷後ストレス障害)のリスクです。重度の虐待の場合、PTSDが伴うことがあります。最後に、発達障害のリスクです。乳幼児期に適切な関わりが得られなかったことによって、親との交流を通じて遂げるはずであった知的発達、関係発達を遂げられなくなるリスクがあります。

これらのリスクが現実化すると、大人から愛情をもらってもその愛情がうまく心の中にたまらなかったり、そもそも大人を信頼できず関係を築けなくなってしまったり、あるいは、他者と同じ世界を共有できなくなったりして、適切な依存関係を結ぶことが難しくなります。その結果、子どもの心の中には寂しさがたまり続けることになります。
 

子どもの孤独と居場所

   
コミュニティにつながりを担保する機能があれば、親以外の大人との間で適切な依存関係を形成し、愛着を形成することが可能です。しかし、上記の社会構造の変化により、子育ては親がするもの(子育ての私化)とされたため、子どもと大人が関係を結ぶことが非常に難しくなっています。

実際、子どもが大人と出会い、遊びや学びを通じて関係を築ける場所(居場所)は減っています。子どもたちが放課後を過ごす場所について世代間で比較したデータを見ると、学童保育で過ごす子どもが増え、友達の家や公園等で遊ぶ子どもが減っていることがわかります。また、子どもの遊び環境に対する保護者の評価を見てみる(※1)と、「事件に巻き込まれないか心配」(49.2%)「交通事故などが心配」(30.8%)といったような子どもを心配する意見が多く挙がっていたり、「習い事をしている子が多い/夕方, 親が忙しくしているため, 外遊びへ連れて行けない」「マンションは増え子供は増える一方だがまったく近くに公園や安心して遊べる空き地など がない」といった意見があるように遊ぶための時間や場所が減っていたりします。これらのことから、子どもたちが自分自身で自分が過ごす場所を選択できない、また選択できたとしても選択肢が減っていることが想像されます。

※1「都市における子どもの遊び環境について」安恒万記 筑紫女学園大学・筑紫女学園大学短期大学部紀要(2009.1)
居場所の数と自己の将来像(10年後)
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出典:平成29年6月 内閣府「特集 若者にとっての人とのつながり」(「平成29年版 子供・若者白書(全体版)」)

居場所の数と子どもたちの精神面に関してのデータを見ると、居場所の数が多いほど生活への充実度が高く、また将来に対して肯定的に捉える傾向にあります。社会の変化により自ら居場所を選択しにくくなり、またそのことが子どもたちの精神面に悪影響を及ぼしていることがわかります。
暮らし向き別の居場所の数
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出典:平成29年6月 内閣府「特集 若者にとっての人とのつながり」(「平成29年版 子供・若者白書(全体版)」)

さらに重要なのは、暮らし向きが良いと感じていない子どもたちは、暮らし向きが良いと感じている子どもたちに比べて、自分の居場所が少ないという点です。居場所が多くある子どもほど、生活が充実していると感じており、また自分の将来について前向きに考えられる傾向にあるといえます。これらのデータから居場所の有無が子どもたちの生活の充実度や精神面に影響を与えるにも関わらず、家庭の経済状況によってそれらが制限されることがわかります。

全ての子どもたちがことが安心して前向きに暮らせるようにするには、家庭の経済状況に関わらず自分の居場所を持てる社会が必要です。