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取り組む課題 母子生活支援施設
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母子生活支援施設とは

   
厚生労働省ウェブサイトでは、以下の通り紹介されています。

母子生活支援施設は、従来は、生活に困窮する母子家庭に住む場所を提供する施設であり、「母子寮」の名称でしたが、平成9年の児童福祉法改正で、施設の目的に「入所者の自立の促進のためにその生活を支援すること」を追加し、名称も変更されました。
 近年では、DV被害者(入所理由が夫等の暴力)が入所者の54%を占め、虐待を受けた児童が入所児童の41%を占めています。また、精神障害や知的障害のある母や、発達障害など障害のあるこどもも増加しています。「母子が一緒に生活しつつ、共に支援を受けることができる唯一の児童福祉施設」という特性を活かし、保護と自立支援の機能の充実が求められています。日本全国261か所に施設があり、そこに3,850世帯、約6千人の子どもが生活しています。(厚生労働省ウェブサイト)
 

入所理由

   
母子生活支援施設に入る理由のうち、もっとも多いのは夫などの暴力、つまりDV被害です。次に続くのが住宅事情で22%、経済事情が10.8%となりますが、DV被害、住宅事情の背景には、経済事情が共通してあると考えられており、経済的な困難を抱えた人の入所が多いことがわかります。

平成20年入所理由
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出典:「母子生活支援施設の現状と課題 社会福祉法人 全国社会福祉協議会 全国母子生活支援施設協議会 平成23年1月」

母子生活支援施設に入所する母親のうち、70.3%が働いていますが、その80%が非正規雇用で不安定な雇用状態です。入所者の収入月額は、正規雇者の内、41%が10~15万円未満で、非正規雇用者の42%が5〜10万円未満となっています。平成23年度全国母子世帯等調査結果報告では、一般の母子世帯1世帯あたりの平均年間収入は291万円(月額約24万円)のため、母子世帯の中でも特に厳しい世帯が利用している状況がわかります。

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出典:「母子生活支援施設の現状と課題 社会福祉法人 全国社会福祉協議会 全国母子生活支援施設協議会 平成23年1月」
 

厳しい現状

   
入所してくる人たちは、虐待を受けたこどもが半数を超えていることに加え、障害のある母子の割合も高く、厳しい状況にいることがわかります。

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出典:「母子生活支援施設の現状と課題 社会福祉法人 全国社会福祉協議会 全国母子生活支援施設協議会 平成23年1月」

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出典:「母子生活支援施設の現状と課題 社会福祉法人 全国社会福祉協議会 全国母子生活支援施設協議会 平成23年1月」
 

可能性とのギャップ

   
このように、厳しい状況にある母子が生活している施設が母子生活支援施設です。児童虐待報告件数は年々増加しており、日々のニュースの中でも痛ましい事件を耳にすることが増えていることからもわかる通り、児童虐待が大きな問題となっていますが、児童虐待を防ぐためには、児童虐待をしてしまう親に対しての支援も重要です。母子生活支援施設を活用することで、在宅では養育が困難な家庭に対しても、母子一体での生活環境を提供しつつ、24時間体制で家庭を見守ることができ、その結果、実の母親による子育を支援することができます。

母子生活支援施設に来るこどものうち、半数近くのこどもには虐待経験がありますが、その背景には、貧困や母親自身の幼児の被虐待経験やDV被害などがあり、そのような成育歴から母親自身も、どのようにこどもを育てたらよいかがわからないことも影響しています。母子生活支援施設利用者調査によると、第 1 子の出産年齢が「10 代だった」利用者は 11.0%です。子育ての知識も経験もないまま母にならざるをえなかった事情を抱えた利用者も少なくないことが予想されます。以下のグラフは、社会福祉法人 全国社会福祉協議会 全国母子生活支援施設協議会が、母子生活支援施設を利用している母親646名に対して、子ども時代の経験のアンケートをとった結果です。

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出典:「母子生活支援施設の現状と課題 社会福祉法人 全国社会福祉協議会 全国母子生活支援施設協議会 平成23年1月」

こども時代の虐待・暴力などの過酷な体験をした母親が、母子生活支援施設に来ていることがわかります。このような人たちに対する適切な支援を行うことは、貧困や虐待の世代間連鎖を防ぐためにも重要であり、母子生活支援施設は、大きな社会的使命を担っていると言えます。しかし、母子生活支援施設の運営は厳しい状況にあり、十分な母子への支援ができているとは言えない状況にあります。母子生活支援施設は、1998年までは母子寮という名称で呼ばれており、元々は戦後、主に戦争で夫・父親をなくした母子への施策として、低所得対策・住宅対策としての機能を担ってきましたが、現在は死別母子ではなく、生別母子の利用が98.7%となり、DV被害や児童虐待、精神障害といった重い課題を持つ利用者がほとんどです。

結果、母子生活支援施設に求められる機能は大きく変化したのに対して、現行の母子生活支援施設は、従前の低所得対策・住宅対策を前提にした施設運営になっているのが現状であり、大きなギャップが生まれています。

 

不十分な専門職員体制

   
母子生活支援施設の多くは、他の児童福祉施設同様、主に措置費と呼ばれる国からの補助金で施設の運営費用を捻出しています。措置費の範囲で雇用できる職員の人員数の最低基準は施設の定員にかかわらず4名です。精神疾患、DVによるPTSD、児童虐待等の課題に対応するためには、夜勤や個別支援を行える体制が必要ですが、そのような体制が整っていない施設が多いのが現状です。

平成H20年現在の全国の母子生活支援施設264施設に勤めている職員総数は2,446人であり、1施設あたり9.3人に上りますが、そのうち、社会福祉士や保育士等の資格を持つ人(有資格者)は1施設あたり4.7名にとどまります。更に、1施設あたりの有資格者の人数は、平成20年現在で公設公営が2.03名、公設民営が4.63名、民設民営が6.54名となっており、特に公設施設での職員の薄さおよびそれに伴う家庭支援体制の脆弱さがうかがえます。
 

施設の老朽化

   
平成20年現在の施設の内、築年数の分布は以下の通りです。民間が設立し、かつ民間で運営されている施設については、築年数が多少浅くなってはいますが、築年数の古い施設が多いのが実情です。

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出典:「母子生活支援施設の現状と課題 社会福祉法人 全国社会福祉協議会 全国母子生活支援施設協議会 平成23年1月」

また、トイレは25%の施設が共同利用の状況にあり、お風呂については、約半分の施設が共同利用の状況のままにあります。

    
設備の状況(トイレ)
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設備の状況(風呂場)
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出典:「母子生活支援施設の現状と課題 社会福祉法人 全国社会福祉協議会 全国母子生活支援施設協議会 平成23年1月」

お風呂やトイレが共同利用であることにより入居者同士のトラブルも少なくなく、また、こどももともに暮らしているため入浴時間なども時間通り行えることは難しい一方で、集団生活の制約を受け、時間割通りの入浴を求められることがストレスだという話も多く聞かれます。お風呂やトイレは、毎日のことであるからこそ、落ち着いた環境が各自に与えられ、ストレスなく使えることが日々の安定した生活に果たす役割も大きいと思われますが、母子生活支援施設ではまだ十分な対応ができているとは言えない状況にあります。

参考資料
「母子生活支援施設の現状と課題 社会福祉法人 全国社会福祉協議会 全国母子生活支援施設協議会 平成23年1月」