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母子生活支援施設

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(2021.4.15 記事更新)

母子生活支援施設とは

母子生活支援施設は、生活にさまざまな困難を抱える母子に居場所を提供することで、母と子を共にケアしていくことを目的とした児童福祉施設です。

かつては母子寮という名称で呼ばれ、金銭的困難を抱える家庭へ生活する場所を提供することを目的に運営されていましたが、 平成9年の児童福祉法改正に伴い名称が変更になるとともに「自立の促進のために生活を支援する」という施設目的が追加され、近年では、DVや虐待による入所、障害のある母親や子どもの入所が増えています。

厚生労働省の調査によると現在は日本全国に232の施設があり、約3,300世帯、5,500人の子どもが暮らしている状況です(施設数:平成28年10月/家庭福祉課調べ)。

<児童福祉法第38条>
母子生活支援施設は、配偶者のない女子又はこれに準ずる事情にある女子及びその者の監護すべき児童を入所させて、これらの者を保護するとともに、 これらの者の自立の促進のためにその生活を支援し、あわせて退所した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設とする。

入所理由

母子生活支援施設に入る理由のうち、もっとも多いのは夫などの暴力、つまりDV被害です(57%)。次いで住宅事情(17%)、経済事情(11%)となります。

一見して経済事情は少なく思われますが、DV被害、住宅事情の背景には経済事情が共通して影響していると考えられており、経済的な困難を抱えた人の入所が多いことがわかります。

平成27年世帯別入所理由割合
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出典:「母子生活支援施設の現状と課題 社会福祉法人 全国社会福祉協議会 全国母子生活支援施設協議会 平成23年1月」
経済的事情が厳しいとはいえ、母子生活支援施設に入所する母親のうち70.3%は働いています。しかし、就労している方の約80%が非正規雇用となっており、非常に不安定な雇用状態にあるというのが現実です。

また、入所者の収入月額は、正規雇者のうち41%が10〜15万円未満、非正規雇用者の42%が5〜10万円未満となっています。

平成23年度全国母子世帯等調査結果報告によると、一般の母子世帯1世帯あたりの平均年間収入は291万円(月額約24万円)となっており、比較すると母子生活支援施設を利用している世帯が、母子世帯の中でも特に厳しい世帯であることがわかります。

平成20年度 母子生活支援施設入所世帯 世帯別収入
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出典:「母子生活支援施設の現状と課題 社会福祉法人 全国社会福祉協議会 全国母子生活支援施設協議会 平成23年1月」

厳しい現状

当然ながら、入所者の困難は就労・経済面だけではありません。
社会福祉協議会の調査によると、入所している子どもの半数近くが虐待経験を持っていること、母親が何らかの障がいを抱えている割合が他と比べて高くなっていることも明らかになっており、 さまざまな点から入所者が厳しい状況に置かれていることがわかります。

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出典:「母子生活支援施設の現状と課題 社会福祉法人 全国社会福祉協議会 全国母子生活支援施設協議会 平成23年1月」
母子生活支援施設入所者における障がいの状況
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出典:「母子生活支援施設の現状と課題 社会福祉法人 全国社会福祉協議会 全国母子生活支援施設協議会 平成23年1月」

可能性とのギャップ

このように、厳しい状況にある母子が生活している施設が母子生活支援施設です。

児童虐待報告件数は年々増加しており、日々のニュースの中でも痛ましい事件を耳にすることが増えていることからもわかる通り、日本では現在児童虐待が大きな問題となっています。

しかし児童虐待を防ぐためには、児童虐待をしてしまう「親」に対するの支援も重要であるという点は、未だ広く認知されているとは言い難いでしょう。
虐待には、親が抱えるさまざまな困難が積み重なった結果生じてしまったというケースが少なくないことが、これまでに多くの研究から明らかにされているのです。

そうした親支援の体制がまだまだ不足している中で、母子生活支援施設は非常に重要な役割を担っています。

母子生活支援施設を活用すれば、在宅での養育が困難な家庭に対して、母子一体での生活環境を提供しつつ、24時間体制で家庭を見守ることがでる、 実の母親による子育を支援することができるからです。

先述の通り、母子生活支援施設に来る子どものうち半数近くのこどもには虐待経験があります。
その背景には、貧困や母親自身の幼児の被虐待経験やDV被害などがあり、そのような成育歴から母親自身も、どのようにこどもを育てたらよいかがわからないことも影響しているのです。

母子生活支援施設利用者調査によると、第1子の出産年齢が「10 代だった」利用者は 11.0%にも登ります。
この数字からは、子育ての知識も経験もないまま母にならざるをえなかったという事情を抱えた利用者が少なくないことも予想されます。

以下のグラフは、社会福祉法人 全国社会福祉協議会 全国母子生活支援施設協議会が、母子生活支援施設を利用している母親646名に対して、子ども時代の経験のアンケートをとった結果です。

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出典:「母子生活支援施設の現状と課題 社会福祉法人 全国社会福祉協議会 全国母子生活支援施設協議会 平成23年1月」
これらの数値の高さから、こども時代の虐待・暴力などの過酷な体験をした母親が、母子生活支援施設に来ていることがわかります。
このような人たちに対する適切な支援を行うことは、貧困や虐待の世代間連鎖を防ぐためにも重要であり、それゆえ母子生活支援施設は、大きな社会的使命を担っていると言えるのです。

しかし、母子生活支援施設の運営は厳しい状況にあり、十分な母子への支援ができているとは言えない状況にあります。
冒頭で紹介した通り、母子生活支援施設は、1998年までは母子寮という名称で呼ばれており、元々は戦後、主に戦争で夫・父親をなくした母子への施策として、低所得対策・住宅対策としての機能を担ってきました。
しかし現在は死別母子ではなく、生別母子の利用が98.7%となり、DV被害や児童虐待、精神障害といった重い課題を持つ利用者がほとんどです。

結果、母子生活支援施設に求められる機能が大きく変化したのに対して、現行の母子生活支援施設は、従前の低所得対策・住宅対策を前提にした施設運営になっているという現状があり、そこに大きなギャップが生まれているのです。

施設の老朽化

平成20年現在の施設の内、築年数の分布は以下の通りです。 民間が設立し、かつ民間で運営されている施設については、築年数が多少浅くなってはいますが、築年数の古い施設が多いのが実情です。

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出典:「母子生活支援施設の現状と課題 社会福祉法人 全国社会福祉協議会 全国母子生活支援施設協議会 平成23年1月」

また、トイレは25%の施設が共同利用の状況にあり、お風呂については、約半分の施設が共同利用の状況のままにあります。

設備の状況(トイレ)
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設備の状況(風呂場)
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出典:「母子生活支援施設の現状と課題 社会福祉法人 全国社会福祉協議会 全国母子生活支援施設協議会 平成23年1月」

お風呂やトイレが共同利用であることにより入居者同士のトラブルも少なくなく、また、こどももともに暮らしているため入浴時間なども時間通り行えることは難しい一方で、集団生活の制約を受け、時間割通りの入浴を求められることがストレスだという話も多く聞かれます。
お風呂やトイレは、毎日のことであるからこそ、落ち着いた環境が各自に与えられ、ストレスなく使えることが日々の安定した生活に果たす役割も大きいと思われますが、母子生活支援施設ではまだ十分な対応ができているとは言えない状況にあります。

参考資料
「母子生活支援施設の現状と課題 社会福祉法人 全国社会福祉協議会 全国母子生活支援施設協議会 平成23年1月」